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が、その時、彼はすぐ傍でさつきから盛子がひろげたり畳んだりしている大きな紅い紙の袋みたいなものに目をとめた。
「それからね」
と、房一はほつとした面持になつて云つた。
「いや、――わしはそんなこたあ嫌ひだ」
そして、食卓に突き立てたまゝになつている短刀を、火箸か何かつかむやうな、無造作な素速い手つきで抜きとると、鞘におさめて腹帯の内側へ入れながら、
「なあに、後から来るのんはほんの擦かすり傷みたいなもんやから、大事ありません。――時にせんせい、何んぼ差上げたらえゝでせう?」
それは言葉にするとこんな風なものであつた。
「ふうむ」
「ねえ、御苦労なこつた」
「おい、ビールをくれ」と、しやがれた低い声で云ふと、土間の安テーブルの前に腰を下した。
「どうですか、掛りさうかね」
房一はその玄関土間に足を踏み入れて、
「おれはまだ一本立ちの医者といふわけにはいかない」
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