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「さうだね。まさか医者の家に古障子の玄関といふわけにもいくまいね」
一
喜作の方でも、房一の来るのを認め、
それからしばらくの間、房一は来る人ごとに、会ふ人ごとに、見舞の言葉を云はれた。彼等は房一の紅黒い顔をまじまじと眺め、そこにその晩の出来事のかけらでも見つけられでもするかのやうに、又何かしら話をひき出さうとし、同情し、感嘆した。そして、きまつたやうにつけ加へた。
「ほう、いつから」
顎から後頭部にかけてと背部と二所を大きく繃帯でぐるぐる巻きにされた男は、やがて待合室へつれて行かれ、ごろりと転がされた。はじめからしまひまで一言も口を利かなかつた。
「ねえ、御苦労なこつた」
「ほらね、かういふ形のと、又別にかういふのがあるだらう」
と、徳次は叮寧にならうとして一種奇妙な言葉づかひになりながら、
房一は熱心に愛想よく椅子をすゝめた。
「それに――」
町の一部では房一が「席を蹴立てて帰つた」といふ評判だつた。それが何か乱暴でも働いた、といふやうに伝つて、噂を聞いた老父の道平は河場からわざわざ様子を聞きに来た。
「や、失礼、おさきに」
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