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「知吉さんはこれまで散々踏みつけられて来たんだから、自分が戸主になつてみるとこれまでの腹いせといふ気もあるんでせうな」
それは一尺近い美事な鮒だつた。だが、三匹きりなかつた。いかにも少いと徳次は路々思つて来た。さう思ふと、この鮒が本当よりもずつとちつぽけにさへ見えて来たのである。
彼が冠をとると、円味のある顎肉には紐の痕が紅く残つていた。
御大典とそれにつゞく奉祝日は瞬またゝくまに過ぎ去つた。
「さうだ。大したことはない」
房一は立ち上つた。すると、着古しのワイシャツから下はズボンなしの毛むじやらな肥つた円つこい肉のついた脚がによつきりと出た。さつき河の中に入つたときに、ズボン下を脱いでしまつたのだ。
――房一がさういふことを耳にしたのはごく最近である。しかし、いづれにしても房一には直接関係のないことだつた。
義母は明日も片づけ仕事が残つているので泊つて行くことになつた。
「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。
「はあ、はあ」
「御病人はどちらで?」
「それは、小規模な演習だからして居らん」
練吉が元の座へ帰つてゆくと、房一はぽつんと一人とり残された。来客達の大半とはすでに顔見知りだつたにかゝはらず、今夜の席では房一は唯一の新顔だつた。
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