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「あゝ、さうか。あゝ、さうか」
それはさうだ、永いことにちがひない、と房一はゆつくりと歩きつゞけた。多分、彼は彼で、自分のこれからの生涯を、その計りがたく、茫漠とした行手を見ていたのだらう。
「え、御老人、どうしました?苦しいですか」
徳次は房一が顔を洗ふ間傍に立つて眺めていた。それからふいに訊いた。
房一のまはりには三人の男が立ちかこんで、黙つて治療の様子を見まもつていた。背中をむき出しにして横向きに寝た男は、傷を洗はれるときに呻うめいた。血の気の引いたその顔にはどす黒い蒼白さが現れた。
と、小谷が云つた。
「さうですよ、ですが、何年ぶりでせう。これがもつと他の所だつたらおたがひ気がつかなかつたかもしれませんよ」
「あゝ、よからう。大賛成ですよ」
「おい、ビールは冷やしてあるかい」
「徳さん。追鮎は君のといつしよに活かしといてもらはうか――どつこいしよ」
川沿ひから分れた路は段々になつた切株だらけの乾田に沿つて、次第上りに、両側はゆるやかな山合ひに切れこんでいた。
房一は笑つていた。
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