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入るなり、
「訴訟があるさうで、面倒なことですな」
と、酒が少し入るとすぐ真赤になる性質の房一は、その紅黒い顔を火照ほてらせ、円い身体を持扱ひかねたやうになつて訊いた。
やつと、徳次は感心した。青島陥落はついこなひだのことで、その時は徳次も提灯ちやうちん行列に出たのである。
「なに?競馬のこと?」
「さあね、もうかれこれ二十年にもなるだらうかね」
「や、先日はどうも――」
「いためた?」
「途中から帰つて来たんだよ」
「これを御大典のお祝ひ日に着るんですつて」
疲労したあまり不機嫌になつた大石練吉は、手荒く疳性かんしやうに衣裳をくるくると巻きながらいつもよりも激しくその切れ目をぱちぱちさせて云つた。
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