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と、云つた。
「さうですよ、あんた。銅の値が上つたさうですね、昨日も九州の方から礦山師が赤山を見に来たんです。あの山ぢあね、随分家屋敷をなくした者があるんですがね」
もう一度軽く頭を下げながら、それまで馬を眺めていた房一はふりかへつて相沢を一瞥した。彼は何故だか判らぬながらに、相沢の話振りから一種不快な響きを聞き分けていた。
それは莫迦げたことにちがひなかつた。だが、その莫迦げた習慣の中に今房一は身を以て入りつゝあるのを感じた。
「はあ、いや。もう手前どもは老いぼれ同然ですからな」
「いや、鳴つた。出張所の鐘がたしかに鳴つていた」
「今晩、寄せてもらつてもえゝですか」
と、房一は机の上に虫の卵の形を書いてみせた。
これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。
好い座敷には床の間、ちがい棚は設けてあるが、チャブ台もなければ、机もない。茶箪笥や茶道具なども備えつけていないのが多い。近来はどこの温泉旅館にも机、硯すずり、書翰箋しょかんせん、封筒、電報用紙のたぐいは備えつけてあるが、そんなものは一切ない。
小谷は仰山ぎやうさんな表情になつた。
と後を追ふと、徳次は
「うむ、――え?」
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