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    「はア」

    「まあ、いゝでせう。せつかくぢやありませんか」――

    「うむ」

    すると、間もなく診察室の方から急ぎ足で出て来た房一は、道平を見るなり、

    「ふむ」

    「今日は士曜日で、半休だからね」

    が、一方盛子もまさに自分の幼時を知つていると云ふ見知らぬ人から声をかけられた時のやうに、目をぱちくりさせ、好意のまじつた当惑と云つたものを感じていた。

    その一揃ひの紙衣裳を見て、道平はまじめに感心した。

    「失礼ですが、もしか、あなたは高間さんではありませんか」

    「をかしいから笑つたのだ」

    「畜生、弱い奴だ」と、根津は笑った。

    練吉は盃を口にふくみながら答へた。

    もう一度小学校の校庭まで辿り着いた時には、衣裳がくたくたになつたのと疲労し切つたのとで、行列をつくつて歩いている間に自然と現れていた共通の類似、あの正面を切つたまじめさが消え失せ、代りに日頃のそれぞれな持前が、尖つた顎だの鹿爪らしい顔つきだのいふものが今や歴然と姿を現した。まだ解散にならぬ前から気早やに冠をかなぐり取つた者もいたし、衣裳をぬぎにかゝつた者さへあつた。

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