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「挨拶みたやうなことはもうしたかの」
「射撃たつて、あれはクレーとかいふものを射つんでせう。わたしはね、他に何か的まとでもあるのかと思つたら、何のことはない、小さなカワラケの皿をね、かうひよつと機械仕掛けでとばしてね、――そいつを射つんでせう。なるほどうまい仕掛けにはちがひないが、見ているとあつけないもんですな。それに音だつてね、景気よくないんですよ。ボスツといふやうな音でね」
「それで、――どうかね?」
「わたし、あれらしいのよ」
「高間さん、ひとつ何とかして引上げさせて下さい。このまゝでは――」
「さういふあんたはどなたで?」
徳次も笑顔になつていた。だが、それは甚だ不器用なもので、絶えず紅らんだり力んだりしながら、眩しげに房一を見たかと思ふと、又当惑したやうな顔になるのであつた。
黒光りのする戸棚の蔭からびつくりしたやうな義母の円つこい眼がのぞくと、
「一つ着て見せたらどうです?高間さんにはきつと似合ひますよ」
「あ、さう云へば」
こういう不便が多々ある代りに、むかしの温泉宿は病を養うに足るような、安らかな暢のびやかな気分に富んでいた。今の温泉宿は万事が便利である代りに、なんとなくがさついて落着きのない、一夜どまりの旅館式になってしまった。一利一害、まことに已やむを得ないのであろう。
「死んだんですか?」
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