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    「やつは、わつしの土方家業がえらい嫌ひでしてな」と、彼は云つた。

    「今日は士曜日で、半休だからね」

    その二つとも何か危険さを伴つていただけに、妊婦である盛子への影響を恐れたのだらうか。それもたしかに、あることはあつた。盛子は、鬼倉との時もさうだつたが、消防事件の時も、後で聞いて並々でない神経性な不安を現した。

    「まあ、とにかく、御迷惑かもしれないが、一度御足労を願ひたいと思つてね」

    身体を拭きにかゝつていると、台所の土間の方で、誰か来たらしい、盛子に向つてしきりと何か云つている声が耳に入つた。それは、せきこんだ、悲しげな、訴へるやうな女の声だつた。

    徳次は自分のことのやうに熱心に路順を考へた。

    酔つぱらふと家にぢつとしていられない性分だ。ひる間だらうと、夜ふけ近からうと、ふらりと表に出かける。たまに、子供が、

    とてもそんなことは!といふ風に房一は答へた。

    日々は平凡に単調に過ぎて行つた。

    「ほう。元気だね。ハッパでやられたかね」

    「へえ。ちよつとばかし――」

    「いゝかね。あんたの身体はどこも悪くない」

    徳次は身体中からこみ上げて来る悦よろこばしさのためにさうなつたかの如く、思ひ切り伸び上るやうにして答へた。だが、それも向ふにはよく聞きとれなかつたらしい。房一は川向ふで手をふつた。下手の方を指さした。徳次には判らなかつた。房一は又自転車にのつた。

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