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    房一はすぐと、大石練吉のことを思ひ浮かべた。大事をとるといふ名目で、彼の対診を求めることにしたのである。

    「わたしやア――」

    「さうだね。まさか医者の家に古障子の玄関といふわけにもいくまいね」

    「まあ、生れ故郷ですから」

    と云つた。

    「や、先日はどうも――」

    思はず時間がたつてしまつた。房一は腰を上げた。前脚の上に顎をのせて長々と寝そべつていた犬は急に起き上つて身ぶるひした。徳次は、房一の往診の時間を大分遅らせたのにやつと気づいた。

    これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。

    「えゝ、まだですが――何か御用?」

    「何かね、わしがどうしたといふんかね」

    心持照れ臭さげにしながらも、盛子は快活などこか家庭的な確しつかりさといつた風なものを現して、この一日造りの漁師達を眺めた。

    「ほう、さうか。それはちつとも知らなかつた」

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