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「あ、神原の喜作さんだ」
「をかしいからとは何ごとだ。火事だといふから手伝ひに来たんぢやないか、そして溝に落ちたのが何がをかしいんだ」
と、房一は訊いた。
「なに、訴訟?」
「あいつも、君んとこと同じで、子供ができたらしいよ」
看護婦がそつと上つて来た。
「あ、さう云へば」
「どういふことです、わたしにはさつぱり――」
さう声に出してみた。そして犬の方をふりかへつた。犬は彼の方を信頼にみちた眼で見上げ、しなやかな尾を振つた。
二人は自転車をひきずつたまゝ近よつた。
「いや、それが――」
「捕虜が内地へ送られるさうだよ」
「いや、人目がなきあそれどころぢや済まんでせう」
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