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私はもともとヌル湯好きで、いつまでつかっても汗のでない程度が好きだ。
控へ目に坐つて、注いだ茶碗を盆の上に揃へると、
「さうですが、それはさうにちがひないが――」
銅山が廃坑となり、時代が移ると共に、他所の町村が発展するのに河原町だけは産業的に衰微し、とりのこされたが、以前の天領気分は今でもなほこの町を中心とする一廓に残つていた。それは近くの村々から「河原風」と呼ばれていた。今でこそ「無暗と気位ばかり高くて能なし」の意味であつたが、当の河原町の人々は、それがどんな意味に使はれていても、腹の中では漠然とした自己尊敬の念を感ずるのであつた。
「――?」
と、きよろりとした目つきに返つた徳次は、立ちはだかつたやうな恰好になりながら、房一の傍に停つて訊いた。
ふと気づくと、玄関に人が立つていた、半シャツの男だ。瞬間、又来たな、と思つた。
「いや、どうも。恐縮です」
「さうですか。それは――」
「まあ、生れ故郷ですから」
「なに?」
「いや、何もしたといふわけぢやない。これから先きのことだよ。かゝり合つちやいかんと云ふんだ」
あまり立てつゞけに挨拶したので、疲くたびれ、いくらか器械的にだが形だけは実直に頭を下げた直造は、稍かすんだ眼で今迎へたばかりの客を見た。
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