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「まあ、いゝでせう。せつかくぢやありませんか」――
「うむ」
「うむ」
「へえ、――どうもごていねいなことで――」
盛子は、歯切れのいゝピツと語尾の跳ね上るやうな調子で、愛想笑ひをしながら小谷に訊いた。
「えらい昔話が又ぶり返したんだな」
「いるかね。いたら、高間さんが御挨拶に見えたからと――」
「私もこれで元は法律書生でしてね。司法官か弁護士試験でも受けるつもりで、神田の私立大学に通つていたもんです」
練吉はそれなり黙つた。
「やあ」
「さうだつてねえ」
云ふなり、ごろりと仰向けにひつくり返へると、新聞を持ち上げ、眼をぱちぱちさせ、やがてうとうとしはじめた。すると、面長な、普通よりもよほど大きい練吉の寝顔には、年に似合はない駄々児のやうな表情が浮んだ。
「どういふことです、わたしにはさつぱり――」
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