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「まあ、葉書でざつと町内に出しときましたがね」
さう呟きながら、下手を眺めた。
「眼が潰つぶれちまふ――ねえ、先生」
「かういふ玩具おもちやのやうなものを出して、年甲斐もないことでした」
「なるほどね」
「それで、何かね。ドイツ兵は徒歩てくで通るんかね」
近づきながら、何となくほの紅くなつて、中声で叫んだ。そして、房一の傍にいる小谷と徳次を認め、小腰をかゞめた。括くゝられてふくらんだ袖口からは気持のいゝ白い腕が露はれていた。
房一は椅子から立ち上つた。
鍵屋へ招かれた時から房一の頭を占めていた考へは、その席で恐らく河原町の人達が彼をどんな風に見ているかがはつきり判るだらうといふことだつた。かういふ集りでは皆が皆自分の据ゑられる席の上下を可笑しい位に気にする習慣を房一はよく知り抜いていた。
「あのう、笹井へ往診がございますが」
あるとき一人の女の客が私に話をした。
「どこか悪いですかな」
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