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「ジョン、そら!ウシ!」
「いや、さういふことは人によつてはあるんだよ」
富田は庄谷の方に向きなほつた。
船体を洗ひ終つて、これから雑具にかゝらうとしたときだつた。彼はふと対岸に目をやつた。物音がしたわけでもなければ、気配を感じたのでもない。しかるに、そこの路の曲り角には、まるで符合したやうにその時きらきら光る真新しい自転車に乗つた男が現れたところだつた。
それから十二年の後である。明治元年の七月、越後の長岡城が西軍のために攻め落された時、根津も江戸を脱走して城方に加わっていた。落城の前日、彼は一緒に脱走して来た友達に語った。
「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。
風はすつかり途絶えていた。
と訊いた。
道平は顎髯を剃り落してしまつていた。
笹の葉の下から現れたのは頭から尾まで黒々と廻り、全体に円味がつき、所々の鱗が金色に光つていた。
「や、さうですか。僕も今そこから帰るところです」
「ねえ、高間さん。どうもこの追鮎は背中に掛り傷があるんで元気がないですよ」
黒光りのする戸棚の蔭からびつくりしたやうな義母の円つこい眼がのぞくと、
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