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    「さあ。どうぞ、どうぞ」

    「もう一人後から来るかもしれませんが、そしたらよろしく頼んます」

    彼はそれを云ひに来たのだつた。

    と、おづおづ答へた。

    「や、これは。高間さんですか。お久しぶりで」――「お忙しいですか」

    と、小谷が云つた。

    間もなく房一は別れを告げ、庭前で又馬の前に立つて二三の話をし、相沢の家を立去つて行つた。相沢のやうな家を患家に持つことは、十軒もの小患家を得たに匹敵すると、ひそかに満足しながら。そして、今日のもてなし方から考へると、医者として十分好意を与へたにちがひない、といふことにも満足しながら。

    「――さうだな」

    「きさまか、鬼倉ちふのは」

    突然、練吉の顔には一種の生気が、何となくもう一人の練吉といつた風なものを思はせる疳の気配、子供染みた我儘さが顔にさし、あのひつきりのない目瞬またゝきが止んで、切れの長い目が眼鏡の奥でぢつと線を引いた。

    と、やがて相手は訊き返した。声音は落ちついて低かつたが、その裏には場合によつてはまるで反対の強さに瞬時に変りかねないことを感じさせる力がこもつていた。

    半シャツの男が進み出た。

    「挨拶みたやうなことはもうしたかの」

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