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「何しに来た?」
「ハッパさね」
「や、これは。高間さんですか。お久しぶりで」――「お忙しいですか」
さう、とりとめもない感慨にふけつていた房一は、ふと、坂路のずつと上の方でごく小さいピカリと光るものを感じた。自転車で誰かが降りて来るのであつた。それはかなりな速さで茂みの間に現れ、又見えなくなり、やがてまつすぐに見通しのきく曲り角のところに、はつきりと大きく現はれた。銀鼠色のかなりにいゝ品らしいソフト帽が見えた。その下に光る眼鏡、面長な白い顔、ペタルの上で、ブレーキを踏んでいるチョコレート色の短靴。――
「なんだ、さつぱり判らんぞう」
「いや、――わしはそんなこたあ嫌ひだ」
何のためか、どういふつもりか、練吉は矢庭に房一の肩をぐんと押した。そして、自分は逸早く溝をとび越して、土手を駆け上つた。下の方では、黒い一杯の人だかりの間からは何やら鋭い言葉を叫ぶ者がいた。練吉が駆け上つた後から、房一も本能的に溝をとび越えた。事態は緊迫していた。練吉が何をしでかすか知れない、といふ予感が閃いたので。
練吉と房一は、川沿ひの路を、肩を並べて自転車を走らせていた。
と、無邪気に、呆あきれたやうに云つた。
それで安心したやうに引つこんだが、しばらくすると又のぞいた。
と、房一は練吉の顔を見て思ひ出したらしく、
黒い影はぴよこりとお辞儀をした。それから台所から射す光りの中に全身を現すと、それを眩しがつているとも照れたとも見える表情を浮べながら近づいた。
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