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    「さうなんです。ちやうどいゝ案配でした」

    「いかんと云ふわけもあるまいさ」

    「あ、さうでしたな。一つ診ていたゞきませう」

    「フム」

    「おれはまだ一本立ちの医者といふわけにはいかない」

    人に話しかけるときにも半分はきまつて独り言のやうになつてしまふ義母はどうもつれ合ひの道平の癖が丸うつりになつたものらしい。だが、道平の声音こわねはあまり響かないぽつりぽつり石ころを並べるやうな調子だつたのにひきかへ、この義母のは突拍子もなく起つて又駆足で空の向ふに消えてゆくやうな大声だつた。

    三間つゞきの奥座敷では蝋燭だの燈芯の明りで照し出された仏壇を前に、来客達が思ひ思ひの所にかたまつて坐つていた。

    と、道平は明かに盛子に気兼ねをしているらしかつた。

    「心臓は多少弱つているが、大したことはない。――いゝかね、あんたの身体はもともと丈夫な身体だ。ようく診たがどこも悪くはない」

    「ふむ、さうか」

    「やっぱりチブスで?」

    「一つ着て見せたらどうです?高間さんにはきつと似合ひますよ」

    今度はかるく甘えた、羽毛でくすぐるやうな調子があつた。房一はざぶりと水を顔にぶつかけただけで立上つた。

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