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「はあ」
「うむ」
足が冷えて来たので、風呂の火でも見ようと立ち上つた時だつた、裏口の戸がゆつくりと外から開いた。
「あのう、笹井へ往診がございますが」
「おーい、火事はどこい行つたあ」こんな風に、口々に喚いていた。
房一はその時逸いち早く、横に寝かされている男の投げ出した手首に血がかすりついているのを、そして寝ながら立てている片足のズボンの膝のあたりにもどす黒い斑点の沁みているのを見てとつた。
「さうよ。てめえはその大将だらう」
あのことだな、と房一は思つた。訊いてどうかな、とは感じたが、相手があまりさつぱりしているので、
自動車が動き出した時、練吉は唇のはしをびりびりさせ、あの切れ目の顔に何かしら水をかけられたやうな表情になりながら、
「それあ、しかし、何だな、知吉さんも今まで不服だつたのをこらへていたんだな、何分かの理窟はあるわけだね」
「それは惜しかつたですな。私などとちがつて学資の心配はなかつたでせうし」
盛子は風呂場の入口で上はずつた声を出した。
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