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「やあ。先日はどうも」
「あゝ、高間さんの奥さん。――さうですね」
房一が道平を送つて行くことになつた。
そんな風におぼえていてくれるとは思ひがけなかつた。
「今日は士曜日で、半休だからね」
看護婦がそつと上つて来た。
「ほう、ほんに!みんなある」
「たゞし、預かるだけだよ。この分が残つている間はいくら後から来ても貰はんよ。いゝかね」
「理窟があるやうな無いやうな話でね。こゝの隠居は相手にならなかつたから、たうとう訴訟といふ所まで来たんだらうが、何しろ相沢の先代とこゝの隠居とは兄弟だしね、――どんな理窟があるにしてもあまり賞めた事ぢやないね」
「へえ。――わし達は小倉組の者ですが、ちよつと怪我人ができましたよつて、せんせいに御面倒かけに上つたんですが」
「眼が潰つぶれちまふ――ねえ、先生」
「わたしはね、こいつは割れさうだなと思つたもんでね」と、笏で自分のはいている木沓を指して、
本堂と庫裡とをつなぐ板敷の間で、ずば抜けて背のひよろ長い、顔も劣らずに馬面うまづらの、真白な反そつ歯ぱのすぐ目につく男が突立つていた。
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