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日は高く上つて、噎むせるやうな温かい空気が、時々、風の工合で河原の方からやつて来た。徳次も切り上げて来た。三箇の魚籠びくを中にして、頭を並べて獲物を見せ合つた。
やうやく三十に手が届いたばかりだが、苦労したのとその無骨な外貌のために年齢よりは四つ五つ老けて見える。がつしりと人並外れて幅広い肩はむくれ上るやうに肉が盛り上つて、何だか猪首のやうな印象を与へた。
「なにぶん山の中でございますから、折々にこんなことがございます。」
と、鬼倉は意外に思つたらしい。小首をかしげていたが、
――「それでは、わしの方からお礼を云はなきあならんのです。どうぞ、よろしく願ひますわ」
「あ、いゝ、いゝ。なんでもありやしない。今すぐ行かう」
と、何か文句にならないことを口の中で云つて、もう一度低いお辞儀をかへした。
が、房一をよく知つている者にとつてはその低い居場所がよけい注意をひくらしかつた。千光寺の住職は何気なく一座を見廻しているうち、思ひがけない所に房一を見つけ、ちよつと顔色を動かせた。それから、時折房一の視線を捕へて会釈ゑしやくしようとしたが、遠くて駄目だつた。庄谷は逸早く房一の席に気がついたらしい、が、その殆ど白味ばかりのやうな細い眼にちらりと微笑を浮べたきりだつた。
「はゝ、知つているな。よし、よし何もいやしない」
「さうですか。それは――」
「うむ、何かあ」
そして、これと全く同じ活気が、あの燃え残りの蝋燭の発する佗びしい、だが、ゆらめくやうな活気が今夜の法事で主人役をつとめている神原直造にもあつた。
「おーい、火事はどこい行つたあ」こんな風に、口々に喚いていた。
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