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と、盛子は大げさに滑稽な顔をしてみせた。
「獲とれましたか」
「はい」
「あ、お帰んなさい」
「あなたは御存知ないんですかね」
「何者かつて云ふが、そもそもこゝで半鐘をたたいたから集つて来たんだぜ」
と、房一はそれまで彼のわきにおとなしく坐りこんでいた犬に声をかけた。川を渡る間中、落ちつかない様子で、普通に地面に坐るのとはちがふ感じにぺつたり船底に腰をつけて時々中空に鼻を上げて、何かの匂を嗅いでいた犬は、房一が自転車を持ち上げるのと同時に、足の下からさつと河原にとび降りて、そこら中を駆けまはつた。
「すまんでしたな、長話をして」
看護婦がそつと上つて来た。
それは背広姿に、遠目にもはつきりと判る緑色のソフトをかぶつた男であつた。
自動車が動き出した時、練吉は唇のはしをびりびりさせ、あの切れ目の顔に何かしら水をかけられたやうな表情になりながら、
時々、澄んだ甘い柔味のある、痩せたすんなりした身体つきを想像させるやうな盛子の声が、はじめは稍張りのある調子で起つて、途中で何かしらはにかんだやうに細く聞えがたくなり、又時々ピツと語尾が跳ね上るやうになつて響いて来た。それは身体の動きとは別に、声そのものが絶えずどこかに柔かくくつついたり離れたり、又そこらを歩きまはつたりしているやうであつた。
「あのね、何ですよ――」
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