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その住居の端々はしばしにまで行きわたつている潔癖さは、同時に大石正文夫妻の年来の好み、その生活の信条といつた風なものをも漠然と現はしていた。
「なあんだ、まだ訴訟してるのか」
かうして、びつくりするほど冴えた、明い日がやつて来た。いや、それは昨日も一昨日もその前も、かういふ日がつゞいていた。だのに、やはり、今日又新しく特別にとび切りにやつて来たとその度に思はせるほどの快い日だつた。どこもかしこも透き通るやうで、はつきりし、乾いた空気がふはりと頬のあたりに触れ、どこからかつんとする気持のいゝ山の匂がやつて来た。
きよろりとした眼でしきりと家の中をのぞきこみながら、しばらくして
奇妙な貸家で、だいたい差配というものは家主に使われているのが普通のはずであるが、ここはアベコベに、差配が伊東で一二を争う金持で、御殿のような大邸宅に住んでいる。家主の方も相当な洋館にいるが、差配にくらべると、月とスッポンである。差配は七十ぐらいの老人で、市会議員で、土建の社長だそうだ。
「ほらね、かういふ形のと、又別にかういふのがあるだらう」
「御病人はどちらで?」
房一はまだ考へ深さうにしていた。
それは、やつぱり何となく「役所」臭かつた。
と、父親の顎のあたりに又目をつけた。
「どういふことです、わたしにはさつぱり――」
「お髯がなくなりましたわ」
対診に来てくれた練吉のことを気にかけているのだつた。
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