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    「いや、危険はまづない見込だ。だが、何と云つたらいゝか――」

    「それが、その、来ないわけがあるのさ」

    が、登り切つた所で、ふりかへつて盛子を待つた。そして、何となく様子のちがつたゆつくりさで登つて来る盛子の、上うは目になつた、意味ありげに笑つている顔を見た。

    「あゝ、高間さんの奥さん。――さうですね」

    「さうです、さうです。さつきも少し遠乗りをやりましてね。帰つて来たばかりなんです。どうしてもこの辺は馬ででもないと、用達しが不便でしてね。町へもこれで出かけます」

    「わたしやア――」

    房一は、行儀よくまだ冠を頭にのつけたまゝの小谷と練吉と並んで板切れの上に坐つていた。

    「さあ、一つ拝見しませう」

    「さあ、どうぞ。仇かたきの家へ行つても朝茶はのめ、と云ふことがありますよ。お茶ぐらいはのんでもらはんと――」

    鍵屋の隠居神原直造は老来なほ矍鑠と云つた様子だつた。

    道平はゆつくりと首を動かして訊いた。

    「ふん」

    「うむ、わしか」

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