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「ふむ、もうよろしい、よろしい」
「はあ、見て参ります」
と云つた。
「何んにも訊かんといて下さい。ちよつと間違ひが起きたんやで、――それは、後でお話しますわ――とにかく、手当を頼みます」
と訊いた。
「途中から帰つて来たんだよ」
「まあ、のみなさい」
房一は下駄をつゝかけて外にとび出していた。何気なく腕時計をすかして見た。七時半だつた。まだそんな時間か、とびつくりして考へたのをおぼえている。すぐ傍を、人が駆け抜けていた。房一も走り出した。どういふものか、さつきうす暗がりで見たぼんやりした小さい白い時計の文字盤が頭の中で見えていた。走り出した方は真暗らな畑中の路だつた。今、房一の右にも左にも誰とも判らない人が一杯で、腕や肩がぶつかつた。小谷も練吉もいつしよに駆け出して来た筈だつたが、どこにいるか判らなかつた。
と訊くと、遊び友達と河へ行つたといふ返事であつた。
「徳さんが新しいのを掛けてくれるまで待つていた方がいいかもしれませんね、これは」
房一はふりかへつた。
私はもともとヌル湯好きで、いつまでつかっても汗のでない程度が好きだ。
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