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    と、小谷が云つた。

    「どうですか、掛りさうかね」

    「何しに来た?」

    「もう一人後から来るかもしれませんが、そしたらよろしく頼んます」

    小谷はしばらく放つていた糸を手許にひきよせて、水の中の鮎を眺めながら云つた。

    と、彼は思ひ出したやうに房一の顔をのぞきこんだ。それは、いつか道平を診察しての帰り路で、「あれだね、君は見かけによらない親思ひなんだね!」と叫んだ時とそつくりな感嘆をまじへた親しさといつた色が閃いていた。

    「ジョン、降りろ」

    「まあ、――上の町の大石さんとこ位は行つとくのもよからうが」

    「いやあ、全く」

    と、房一を誘つていた。

    かうして、予定の時刻を大分遅れて小学校の校庭に辿りついた時には、腹は空くし全く放々の態であつた。が、遅れたのはその一隊ばかりでなく、所々で踊りを見せながら山車だしを引つ張つて来る組も、他にも大分遅れる組があつた。で、彼等は気をとりなほして万歳を三唱し、直ぐに思ひ思ひの所に散らばつて焚出たきだしの握飯をほゝばつた。もうこゝは町内であるから、たくさんの見物人が集つて来ていたが、午前の一歩きですつかりへこたれ、埃で顔が黒くなり、疲れた彼等は、そのおかげでもう照臭さも何もなかつた。

    「大きに。ありがたうござんす。よろしう頼んます」

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