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稍意地の悪い、きびしい調子であつた。
「へえ。ちよつとばかし――」
「どうぞ」
房一は、犬を制した。ところが感ちがひしたジョンは堤防の方へ大急ぎで走つて行つたが、房一と徳次の二人がそのまゝ河原にしやがみこんだのを見ると、又一目散に戻つて来、まはりの草の中を嗅いで見、二人を眺め、一向に動きさうもないと知ると、石ころの上に腹を着けて長い舌を出した。が、急に尻尾を振つた。二人が彼の方を向いたからである。
徳次も笑顔になつていた。だが、それは甚だ不器用なもので、絶えず紅らんだり力んだりしながら、眩しげに房一を見たかと思ふと、又当惑したやうな顔になるのであつた。
と、盛子は大げさに滑稽な顔をしてみせた。
「やあ、しばらくで」
小谷は相手にされなかつたやうに感じてちよつと顔をしかめた。が、しばらくすると又声をかけた。
それまで房一は、加藤巡査を通じて出張所と話をつけ、何らかの形で収拾させたいと考へていたのである。が、彼の素速い判断力は今はその余裕もないことを見抜いた。
徳次はきまり悪げに、しかし、又あのきよろりとした眼つきにかへりながら云つた。
「ねえ!」
「つい今日まで挨拶にも行かずじまひになつてね、どうも済まなかつた」
「袴はそこですよ。足袋を先きにはくのよ」
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