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「はあ、はあ」
「うん」
盛子は妊娠していた。
「ほう、さうか。毎年あるのかね。そいぢや、これから度々見られるわけだな」
「やあ」
「をかしな男だな」
「ふむ、トンネルのハッパだな」
徳次は人の好い、いかにもさう信じこんだやうな眼で二人を眺めた。
傷は三箇所を縫つた。
男は語尾に力を入れて、房一の眼の中をのぞきこんだ。
と、云つた。
「ね、君」
房一も彼等の仲間であつた。だが、彼はその不器用な竿の操り方と、首の短い、肩幅のむやみと広い、上半身にくらべて不釣合に短い両脚や、ぐつと突き出している下腹部(それは服を着た時に堂々とした押出しに見えたけれども)、そんな特長のある身体つきが、彼らしい不様ぶざまな身ごしらへのためによけい目立つて、例のおきまりの大きな麦藁帽子や白シャツにもかゝはらず、遠くからでもすぐそれと見分がついた。彼はいかにも新参者らしく真新しい手拭を首にかけて、それを顎の下で変な形に結んでいた。彼にも、他の者に共通な、あの幸福さうな仔細しさいらしい表情が見られた。少年の頃恐しく敏捷だつたにもかゝはらず、近年とみに肥満して来たので、動作が何だか不自由さうであつた。彼は水中の石苔に滑つて何度か転んだ。彼は以前の水遊びを、その頃の巧みですばやい身ごなしを忘れ果てたかのやうであつた。
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