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    だが、その間にも土手の押問答はつゞけられた。

    第四章

    で、この二人の間に交されたとんちんかんな立話は終りを告げた。

    足が冷えて来たので、風呂の火でも見ようと立ち上つた時だつた、裏口の戸がゆつくりと外から開いた。

    彼らは家の間まの一つを「商人宿」にしている。ここも按摩が住んでいるのである。この「宗さん」という按摩は浄瑠璃屋の常連の一人で、尺八も吹く。木地屋から聞こえて来る尺八は宗さんのひまでいる証拠である。

    肉が部厚に盛り上つているために自然と深くできた額の横皺、稍やゝ動物的な感じのする大きな眼玉、近頃その上に髭を蓄へはじめた厚いふくらんだやうな唇、それらのあまり美しいとは云へない部分々々を一つの形にまとめるやうに顔の下半から張り出している円い確しつかりとした案外柔味のある顎――盛子が結婚後最初に覚えたのはこの円い顎だつた。それは房一の顔に調和と落ちつきを与へていたばかりでなく、盛子の胸に何かしら安心と親しみ易さを感じさせた。

    「あれなら、私の方からいゝやうにしときます」

    「昨日、君とこの奥さんがバスに乗るところを見かけたが、――」

    「えらい昔話が又ぶり返したんだな」

    「さう、カワラケ、カワラケ云ひなさんな」

    と、房一はほつとした面持になつて云つた。

    彼が冠をとると、円味のある顎肉には紐の痕が紅く残つていた。

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