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    「まあ、とにかく、御迷惑かもしれないが、一度御足労を願ひたいと思つてね」

    「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。

    「ほう、ほんに!みんなある」

    「いや、そこまで確かなことにはしませんでしたが」

    「ほらね、かういふ形のと、又別にかういふのがあるだらう」

    「ふうん、それもよからう」

    房一は生返事をしてからふり向き、うなづいて見せた。彼はよく聞いてはいなかつた。

    感心したやうに呟くと、房一はくるりと向ふむきになつて歩き出した。

    「さうか、――そんなに何もかも、こつちでして貰つてもえゝか」

    だが、さういふことは練吉は今まで考へたことがなかつた。その必要もなかつた。それは単に一つの習慣、彼自身のと云ふより、河原町に張りわたされているあの根深い習慣のおかげだつた。

    「どなたか知りませんが、この男が御騒がせしたさうで、御無礼でした」

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