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酔つぱらふと家にぢつとしていられない性分だ。ひる間だらうと、夜ふけ近からうと、ふらりと表に出かける。たまに、子供が、
と生返事をしながら、大工の口にした高間医院といふ名前が耳新しく響いたので、房一は思はず微笑した。
ざつと四十人近い客数であつた。その半ばあたりへ来ると、直造は一々前まで行くのを止めて、ふりかへつては「山下さん、お次へどうぞ」と云ふ風に名を呼びはじめた。だが、房一の所へはなかなか来なかつた。大部分の客が席に居並んだ頃になつて、房一は漸く自分を呼ぶ直造の稍しやがれた声を聞いた。
房一はすつかり夢中になつていた。
「もう一人後から来るかもしれませんが、そしたらよろしく頼んます」
「や、ありがたう」
「どうして?血はつゞいていなくてもこゝの家とは親類ぢやありませんか」
笹の葉の下から現れたのは頭から尾まで黒々と廻り、全体に円味がつき、所々の鱗が金色に光つていた。
看護婦がそつと上つて来た。
身体を拭きにかゝつていると、台所の土間の方で、誰か来たらしい、盛子に向つてしきりと何か云つている声が耳に入つた。それは、せきこんだ、悲しげな、訴へるやうな女の声だつた。
「だいぶ、様子が変りましたな」
「今日はえらい早いお帰りだね」
「昨日、君とこの奥さんがバスに乗るところを見かけたが、――」
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