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    「いや、挨拶まはりですよ。どうぞよろしく」

    徳次は身体中からこみ上げて来る悦よろこばしさのためにさうなつたかの如く、思ひ切り伸び上るやうにして答へた。だが、それも向ふにはよく聞きとれなかつたらしい。房一は川向ふで手をふつた。下手の方を指さした。徳次には判らなかつた。房一は又自転車にのつた。

    練吉と房一は、川沿ひの路を、肩を並べて自転車を走らせていた。

    房一は目を上げて注意深く道平を見た。

    一わたり済むと、練吉は最後にもう一度注意深く病人の顔をぢつと眺め、

    房一は思はず笑ひ出した。

    「今日は士曜日で、半休だからね」

    「はゝ、知つているな。よし、よし何もいやしない」

    「笹井?――御隠居さんが云つたのかい」

    房一は前の方を向いたまゝだつた。

    と、大声で訊いた。

    今度は正文の方で答へなかつた。そして急に苦がい顔になつて、ぢろりと薬戸棚を見まはしただけで母屋おもやの方へ帰つて行つた。

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