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    「鮒?――それあ喰べるとも」

    「あいつらと来たら、すぐこれ!だからね」

    かういふことになると、彼の話振りには一種の無邪気さが現れて釆る。

    練吉は永い間黙つていた。それから、いかにもいやいやな調子で、

    「あゝ、高間さんの奥さん。――さうですね」

    云ふなり、ごろりと仰向けにひつくり返へると、新聞を持ち上げ、眼をぱちぱちさせ、やがてうとうとしはじめた。すると、面長な、普通よりもよほど大きい練吉の寝顔には、年に似合はない駄々児のやうな表情が浮んだ。

    「うん、ドイツ兵の捕虜だ」

    彼は年に似合はず厚く生えた白髪まじりの頭を短か目に刈り上げ、多少猫背になりながら袴の両脇から手を差しこみ、心持肱を張つて坐つていた。それは何々翁肖像といふ掛軸を思はせるやうな古風な律義さと端正さを現はしていた。

    日々は平凡に単調に過ぎて行つた。

    第四章

    と、房一は急いで頼んだ。加藤巡査は一瞬、不安な面持をした。が、房一の態度が決然としていたのと、急策としてはそれより他にないことも明かだつたから、直ちに承諾を与へた。

    練吉はもうさつきから殆ど一人でぐいぐいやつているにもかゝはらず、むしろ青い顔だつた。

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