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    今泉にはやつと徳次の考へていることが判つたので、熱心に説明した。

    ――「やあ、おいでなさい。わたし相沢です」

    答へながら、彼は紅くなつていた。

    「えらい昔話が又ぶり返したんだな」

    身体を拭きにかゝつていると、台所の土間の方で、誰か来たらしい、盛子に向つてしきりと何か云つている声が耳に入つた。それは、せきこんだ、悲しげな、訴へるやうな女の声だつた。

    「どうも、やつぱりねえ。調子が悪い」

    「あの、さきほど往診に出かけましたさうで」

    正文は顎をつき出しては一寸笑つて、ふむ、ふむ、とひとりでうなづいていた。

    「かりに、おれが真正面から反抗的に出て、それがために住みにくくなつたとしても、同じことだ」

    ふいに、徳次はしたゝかに横頬を殴られるのを感じた。容赦のない力が彼の首すぢをつかまへ、又やられた、一つ、二つ。それは、突然うしろからやつて来た。何だか判らなかつた。そして、抵抗するはずみを失ひ、きよとんとして見上げた。

    ふいに、彼は頭を上げた。

    「ですが、一体財産譲渡つて云ふのはいつのことなんです、大分前ぢやないですか」

    「これはあなたがお乗りになるので――?」

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