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    宿の者はこういっただけで、その以上の説明を加えなかった。伊助の報告もそれで終った。

    「なに、訴訟?」

    「印度洋の方では、何とかいふ軍艦がたつた一隻で荒あばれまはつているんだつてね。それがちつとも捉つかまらないと云ふから面白いねえ」

    「ほゝう!」

    尿には蛋白質はなかつた。排便を顕微鏡でのぞいてみた。いる、いる。蛔虫に十二指腸虫の卵がうんとこさ見えた。

    「さうさう、先だつてはお加減がわるかつたさうですが――」

    と、急に練吉が小耳にはさんで云つたのは、多分黙つて他のことを考へていたのだらう。

    見たことのない顔だつた。患者なら玄関から来る筈だ。

    房一はズボン下を円めて魚寵といつしよにぶら下げながら、丸出しの肥つた足でぴよいぴよい河原石の上を先に立つて歩いた。

    河原町の部落がそれに沿つて長く伸びているあの川は、この附近では単に吉川と呼ばれているが、町の少し上手では二つの支流を合したものとなつているので、それにも各々ちがつた名がついていたが、こゝから更に下流になると、はるか下手の河口にある町の名をとつて吉賀川となるのである。

    と、無邪気に、呆あきれたやうに云つた。

    が、それは徳次であつた。

    「あれだね、君は見かけによらない――親思ひなんだね!」

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