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さつきから、日のあたる縁側近くに縫物を持ち出していた盛子は、あんまりびつくりしたのと身体が重いのとで、立上ることを忘れてかう感嘆詞を連発しながら、あの語尾の跳ね上りを少し響かせながら、庭先に現れた人影に向つて目を瞠みはつていた。
「あゝ、お医者?」
と、練吉は急いで云つた。
「どこの訴訟だ。なに鍵屋、うん、相沢か」
「あんたも、おめでたいさうで」
読経がはじまつた。皆話をやめてその方を向いて坐り直した。
「へえ、いえ」
「もう河原町へは当分帰る気はないんですかね。貴方にお貸したところをみると」
と、練吉が引つたくるやうにとつてしまつた。
たとい健康の人間でも、往復の長い時間をかんがえると、一泊や二泊で引揚げて来ては、わざわざ行った甲斐かいがないということにもなるから、少くも四、五日や一週間は滞在するのが普通であった。
「あんたは鮒をたべなさるかね」
道平は顎髯を剃り落してしまつていた。
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