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と、小谷は人差指と中指を二本突き出して見せて、
「ありがたう。――あ、大きいね」
房一は苦笑した。
「よく来て下さいましたな。何しろ不便なところですから、途中が大変だつたでせう」
「こんなところで初対面のご挨拶をしようとは思ひがけなかつたですね。――いや、初対面といふわけでもないんですな」
「君達は一体何者だ!」
半ば感心し、半ば疑はしさうに、彼は指を自分の眼に向けてみた。
しばらく黙つていた後で、房一は
房一は近い往診の帰りに河の石畳みの土手をつたつて歩いていると、広い河原を前にし土手沿ひの小高い畑地の端に立つて、特長のあるごつごつした頭骨を露あらはにし、両手を帯の前にはさんだまゝ、殆ど反そり身に立つたまゝあたりを眺めている男を見た。
そこに、房一は、酒のために紅くなつてはいるが、そして、まだ額のあたりに筋張つた色が立つてはいるが、稍やゝ前こゞみになつた半白の頭を見た。それは河原町の人などには見られぬ線の粗あらさとどぎつさこそあつたが、想像したよりもはるかに老人だつた。
「いやあ、全く」
房一は手足を洗ふと、簡単に診察着をひつかけて表へ廻つた。
盛子は時々半ば無意識に呟いた。
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