このページについて
「印度洋の方では、何とかいふ軍艦がたつた一隻で荒あばれまはつているんだつてね。それがちつとも捉つかまらないと云ふから面白いねえ」
「さうです。農林学校の先生だとかをしていられると聞きましたが」
「相手は誰です?こゝの御隠居ですかい」
真黒い顔の男が傍によつて訊いた。
練吉は軽く頭を下げながら、相手の房一がいきなり直立不動のやうに足をそろへたのを見た。
実際、練吉の滑つこい気持よくふくらんだ頬には、その時ちらりとした微笑の影がさしていた。
だが、今日は徳次の方でめづらしく今泉の近づいて来るのを待つていた。といふのは、今泉の方でも遠くから徳次を見つけるや否や、声にこそ出さなかつたが、何か話すことがありさうな様子で、急ぎ足になつたからである。
町の一部では房一が「席を蹴立てて帰つた」といふ評判だつた。それが何か乱暴でも働いた、といふやうに伝つて、噂を聞いた老父の道平は河場からわざわざ様子を聞きに来た。
庄谷はほんのしるしだけにちよつと頭を動かしたが、やつと相手が誰だか思ひ出したらしく、その細い眼が急に徴笑した。
だが、このはてしのない遠慮深さは気持の悪いものではなかつた。
それは背広姿に、遠目にもはつきりと判る緑色のソフトをかぶつた男であつた。
はるか下流の方で、鈍いが、重味のある大きな音が響いたのだ。それは、はじめぼおーんといふ風に聞え、つゞいてドカンドカンと来た。
「あ、お帰んなさい」
- 山の中の素敵な温泉飛騨高山温泉の予約なら当サイト
- 清流流れる温泉四万温泉の予約なら当サイト
- 海際のハイセンスな宿鴨川温泉の予約なら当サイト
- 日本海の夕日をmini!皆生温泉の予約なら当サイトへどうぞ