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「うん、ドイツ兵の捕虜だ」
「えゝ、まだですが――何か御用?」
「あのう、笹井へ往診がございますが」
「何を云うとる。すまじきものは宮仕へ、といふぢやないか」
「それは、まあ、都会風でいけばそれでいゝわけだが」
「よし。――さうしとかう」
かうして、びつくりするほど冴えた、明い日がやつて来た。いや、それは昨日も一昨日もその前も、かういふ日がつゞいていた。だのに、やはり、今日又新しく特別にとび切りにやつて来たとその度に思はせるほどの快い日だつた。どこもかしこも透き通るやうで、はつきりし、乾いた空気がふはりと頬のあたりに触れ、どこからかつんとする気持のいゝ山の匂がやつて来た。
「たゞし、預かるだけだよ。この分が残つている間はいくら後から来ても貰はんよ。いゝかね」
「何分ごらんの通りの未熟者でして――」
「なにぶん山の中でございますから、折々にこんなことがございます。」
「あれは本当ですかね、相沢さんが訴訟を起したと云ふのは?」
「いや、これから往診に行くところだ」
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