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    道平はそのまゝ夕食を招よばれて、ゆつくり腰を落ちつけていたが、夜ふけ近い頃になつて、ひよつこり

    だが、その間にも土手の押問答はつゞけられた。

    そして、少し横手に身をひきながら、しげしげと房一を眺めた。感慨無量、と云つた態ていであつた。

    練吉は、癖だと見えて、折角きちんとかぶつて出たカンカン帽をいきなり指で突き上げて阿弥陀あみだにすると、いかにもだらりとした様子で歩き出した。それは、さつき別人の観があつた、てきぱきした、俊敏な医者らしい練吉から、もとの彼に逆もどりした風であつた。

    「や、さうですか。僕も今そこから帰るところです」

    「去年はなかつたんですよ。何でも博労ばくらう同士のうちわ揉もめがあつたとかでね」

    「うん。青島陥落の、ほら、旅団長閣下だよ」

    「さうかの。だが、さう云うても――」

    房一が云ひかけると

    次に記すのは、ほんとうの怪談らしい話である。

    宿の者はこういっただけで、その以上の説明を加えなかった。伊助の報告もそれで終った。

    その子供染みた好奇心に輝いている横顔は、この老人の胸の奥から恐らくその年齢と調子を合せてゆつくりと流れて来る悦びのためもあつたらう。その悦びの源泉はもとより房一にあつた。

    「はあ、どうも」

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