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徳次は気が抜けたやうに、口のあたりをもごもごさせるきりだつた。
「大きいやつだねえ」
「これからどちらへ?」
「はあ――ふむ、うちへもかね」
「え、何です、前期と後期とをつゞけさまにうかりましたつて。――ふうん、それやえらいもんですな。なかなか、あの検定試験といふやつは、医学校なんかの年限さへ来ればずるずるに医者になつてしまふのとはちがつて、相当な目に合はされますからな」
「うむ、うむ」
「さうだ、君はあの時の射撃大会に出たさうだね」
「それは、まあ、都会風でいけばそれでいゝわけだが」
「大石練吉です」
河原の端にある高い築堤の上で、白い割烹着かつぽうぎを着た女が、口に手をあてて何か叫んでいた。
答へながら、彼は紅くなつていた。
ふいに、徳次はしたゝかに横頬を殴られるのを感じた。容赦のない力が彼の首すぢをつかまへ、又やられた、一つ、二つ。それは、突然うしろからやつて来た。何だか判らなかつた。そして、抵抗するはずみを失ひ、きよとんとして見上げた。
「どこの帰りかね」
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