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房一の出先きで起きたこと、何かしら普通でないその事を理解しようとして、盛子は房一の顔をまじまじと見まもつた。
私にとっては、三十八度から四十度ぐらいが最も快適な入浴であることを確認したが、冬は湯上りの寒さに抗する必要があるので、多少汗ばむのを我慢して、四十一二度の温泉の湯につかる。伊東市でこれ以上チッポケな湯殿はなかろうと思われるぐらい、洗い場もないほどのところだが、私にはこれ以上の広さも必要ではない。ただ釜たきをする人たちが気の毒であった。
「まだ?ふん!よせ、よせ。阿呆らしい」
今頃になつて、男はさう訊き、盛子がそれに答へる前に、ひとりでうなづいていた。
この町に一体火事なんて、いつあつたらう。たしか、三年前に一度、そして去年の春さきに小火ぼやが一度、それも藁火が離納屋に燃え移つただけのことで、それだのに殆ど町中がいや近在からも山を越して人が集り、提灯ちやうちんが集り、大変な騒ぎだつた。めつたにないどころではない、他のことは忘れても、この殆ど珍重すべき火事は、そのあつた年も、場所も火元の蒼白な顔も、ありありと覚えこんでしまはれるのだつた。
「いや、私はすぐこの近くで医者をしとる、高間といふ者ですが」
今泉はかすかに鼻のあたりを不満げにふくらませた。
「――?」
今の家へは、温泉がぬるいというのを承知の上で越してきた。
「どこか悪いですかな」
「去年はなかつたんですよ。何でも博労ばくらう同士のうちわ揉もめがあつたとかでね」
徳次は自分のことのやうに熱心に路順を考へた。
「あれなら、私の方からいゝやうにしときます」
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