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    そして、食卓に突き立てたまゝになつている短刀を、火箸か何かつかむやうな、無造作な素速い手つきで抜きとると、鞘におさめて腹帯の内側へ入れながら、

    「ふむ」

    そこには一人の男が顔を手拭で蔽はれたまゝ、一種普通でない様子で寝かされていた。手拭の下からは赤黒く汚れた額の一部と、土埃にまみれた頭髪とがはみ出していた。その傍には、やはり印袢纏着の真黒い顔の男がついて、ぽかんとして戸外を眺めていた。

    「いや、鳴つた。出張所の鐘がたしかに鳴つていた」

    道平が口をうごかせるまでには随分手まどつた。

    ふたたび相手の鞄にちらりと目をやりながら、練吉は半ば信じない風に訊いた。

    「あなたは御存知ないんですかね」

    「うん、寄りがあるからな、あんたはうちに帰つとんなさい」

    「今、あんたの便をしらべてみたがね」

    それから上着を脱ぐと、ワイシャツの袖をまくり上げて、診察にかゝつた。無造作にひよいと病人の瞼をつまみ上げ、めくつて、眼の色を調べた。半裸体のむき出しになつた腕をつかんで静かに屈伸させた。顔面の皮膚をひつ張る、足を立てさせる、今度は足の裏を見る、――それはまさに手慣れた、素速い、注意深い動作だつた。まさしく、医者といふものだつた。

    「うん」

    「ねえ、御苦労なこつた」

    「この人はちっと眠むがってるでな……」

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