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    「あの訴訟はどうなつたのかね」

    きよろりとした眼でしきりと家の中をのぞきこみながら、しばらくして

    そこへは、案内も乞はずに、小谷吾郎が気がるに裏口から入つて来た。

    と、今泉は一寸声をひそめた。

    あるとき一人の女の客が私に話をした。

    いくらか浮うはつ調子に口の軽くなつた小谷にひきかへ、今夜の練吉は何となく元気がなかつた。細かいながらに絣かすりの目のはつきりした大島の上下揃ひを稍ぞんざいに着こみ、吃り気味に話をする彼には、だらりとした様子と同時に、どこか家風の結果といふやうな一脈の潔癖さが混交していた。

    「何んにも訊かんといて下さい。ちよつと間違ひが起きたんやで、――それは、後でお話しますわ――とにかく、手当を頼みます」

    彼は年に似合はず厚く生えた白髪まじりの頭を短か目に刈り上げ、多少猫背になりながら袴の両脇から手を差しこみ、心持肱を張つて坐つていた。それは何々翁肖像といふ掛軸を思はせるやうな古風な律義さと端正さを現はしていた。

    「え」

    道平が口をうごかせるまでには随分手まどつた。

    「いゝよ、君。帰りたまへ、その方がいゝんだから」

    「うむ、うむ」

    「へえ、どういふわけでせう」

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