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これが若し他人だつたら、或ひはかけがへのない一人息子でなかつたら、正文もいさぎよく結着をつけてしまつたらう。「道楽息子」――その一言で済むわけだつた。
「はあ、見て参ります」
庄谷はあの冷笑するやうな白眼で、物好に訊きたがる人に答へた。
云はずと知れたことだ、といふやうに徳次はそのきよろりとした眼を上げて小莫迦こばかにした風に小谷を眺めた。大きい麦藁帽子を被つているので、小谷のやさしい顔立ちはひどく女らしく見えた。
「さあね、そいつは今のところ何とも判らんでせうな。何しろこの前に手をつけたのは十年前だつたでせうかね、その時の礦石のかけらも残つちやいませんよ」
答へながら、彼は紅くなつていた。
柳里恭りゅうりきょうの『雲萍雑志うんぴょうざっし』のうちに、こんな話がある。
と、一向にそんなことを知らない房一が云つた。
「徳さん。追鮎は君のといつしよに活かしといてもらはうか――どつこいしよ」
「ふうむ。いや、よからう」
庄谷の細い眼が又微笑した。だが、その瞬間に現はれたほんの少しの人なつこさ、古い記憶のほのめきは、すぐ又大急ぎでどこかへ隠れこんで行くやうに見えた。
控へ目に坐つて、注いだ茶碗を盆の上に揃へると、
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