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さう云ひながら、盛子はゆつくりと喰べていた物がまだ口の中に残つているような無邪気な顔をした。
その次は「角屋」の婆さんと言われている年寄っただるま茶屋の女が、古くからいたその「角屋」からとび出して一人で汁粉屋をはじめている家である。客の来ているのは見たことがない。婆さんはいつでも「滝屋」という別のだるま屋の囲爐裡の傍で「角屋」の悪口を言っては、硝子戸越しに街道を通る人に媚を送っている。
「よし!」
「はゝゝ、でもカワラケにはちがひない、それがかうひよつとね」
「たゞし、預かるだけだよ。この分が残つている間はいくら後から来ても貰はんよ。いゝかね」
宿の者はこういっただけで、その以上の説明を加えなかった。伊助の報告もそれで終った。
と、いきなり突きを喰はされた練吉は、神経的にさつと青ざめながら、反問した。
八月も末だつた。十日あまり思ひがけない涼しさがつゞいたので、このまゝ九月に入るのかと思はれたが、暑さは又ぶり返して、がまんがならないほどだつた。
「本日は、私ごとき者までお招きに預りまして」
かういふことになると、彼の話振りには一種の無邪気さが現れて釆る。
「何だらう?」
「わたしの方でも、もう一度こちらから上つて、お目にかかりたいと思つていたところなんですよ。――今日はこんな所で、じつさいいゝ案配でした」
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