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    ふたたび相手の鞄にちらりと目をやりながら、練吉は半ば信じない風に訊いた。

    房一は前の方を向いたまゝだつた。

    「ふむ」

    「やあ、今晩は」

    男の顔は泥と血で汚れ、かすり傷が一面についていた。顎の所にかなりひどい裂傷があり、血糊が固くこびりついていた。どこか打撲傷をうけたらしく、一見したところ気息奄々きそくえんえんとしていたが、房一が手拭をとり除いたときに、男はかすかに眼を開けて房一の顔を見た。

    と、道平は云はれた通りに腰を下さうとして、椅子の円々とふくらんだ真新しい天鵞絨びろうどの輝きに目をとめると、しばらくまじまじと眺めていたが、もう腰をかけるのは止めてしまつた。やはりゆつくりした様子で立つている。

    「あら、ほんとうに沢山とれたんですね」

    「やっぱりチブスで?」

    房一は椅子から立ち上つた。

    房一は白シャツを着た小柄な大工と並んで立ちながら、玄関を眺めて云つた。

    「ジョン、そら!ウシ!」

    「おや、いつのまにそこに来てなさつたかね。お茶ですか、上げますとも」

    「うん、もうさつき帰つたよ」

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